朝崎郁恵、満月の夜にシマウタを唄う

気軽に奄美のシマ唄・三味線に触れて欲しいというコンセプトで、青山のライブハウス「月見ル君想フ」にて行われている、朝崎郁恵の月例奄美シマ唄会。
普段はピアノ伴奏で歌うことが多い朝崎郁恵だが、この唄会では、三味線を中心とした島唄を披露している。そして、ステージの合間には、奄美研究家・内田満開氏が、毎回テーマごとに奄美の島唄、言葉、風俗などを取り上げ、分かり易く奄美の伝統文化を説明してくれる。島料理、黒糖焼酎、物産も揃っており、独特な奄美の文化を知るにはもってこいのイベントだ。
8月9日(水)は『朝崎郁恵、満月の夜にシマウタを唄う』と題して、マブリの二人(三味線:タナカアツシ、太鼓:奈良大介)を招いての唄会となった。
■1部 マブリ(魂)ステージ
先ずは、マブリのタナカアツシと奈良大介が登場し島唄を披露。タナカアツシの三味線(ときにアコギに持ち替える)に、奈良大介のジャンベがリズムを刻む。一見チョイ悪オヤジ風の二人だが、実力は師匠朝崎郁恵お墨付き。きれいな高い声とテクニックのある演奏で、しっかりと島唄の雰囲気を醸し出し、観客を魅了した。
■内田満開氏の奄美よもやま話
唄者・朝崎郁恵が登場する合間に恒例の内田満開氏のお話。 先ずは、奄美のあいさつ『ウガミ(ン)ショーレ』について。 この言葉は古語の「拝み候」が訛って、ウガミショーレになったといわれる(地域によっては、ウガミショーラともいう)。奄美の方言(シマグチ)で「はじめまして」や朝、昼、夜の挨拶の言葉に使われている。 この『ウガミ=拝み』は、人と人との出会いを喜び、出会えた命を拝むところから、「あなたを尊敬申し上げております」という意味がこめられているのだそうだ。 日本は古来から全てのものに魂が宿るという八百万の神への信仰が根深いが、奄美はそれを日常生活の中でさらに敏感に感じ取っているのだろう。人の命だけでなく、土地にも命が宿ると考え、この場所に出会えたということに対しても「ウガミショーレ」と感謝するそうだ。 満開氏はさらに、歌声にも魂が宿るということを付け加え、観客に対し「今日は、朝崎郁恵さんの歌声に出会えたことにも”ウガミショーレ”と言いましょう」と語った。
そして、本日我々が出会う「いとぅ」という労働歌を例にとり、『ゆいわく』(共同作業)の話へと続いた。
奄美には、いまでも共に助け合い労働力の交換を行う「結い(ユイ)」の精神が脈々と受け継がれている。人間は本来こういう助け合いの姿が当たり前だった。合理化にともない失ってしまった、この「ゆいわく」の精神が、最近都会の若者達に見直されつつあるという。
ちなみに、トシちゃんの「ゆうわくスレスレ」は労働歌ではありません。(♪男は顔じゃないよハートさ 女は顔じゃないよノリだよ〜♪と歌われているので、恋の歌です)
ユイ(結い)について詳しくはコチラを参照(ゆいと癒しの里 あまぎ町HP)
■2部 朝崎郁恵ステージ
本日の演奏、お囃子は、気心が知れてるマブリの二人だからか、先日の六本木ヒルズとは打って変わって、終始リラックスしているご様子。
三味線の島唄だけでなく、タナカアツシのギターでシンプルにしっとりと唄う「ティクテングワ」や、ノリの良い「千鳥浜」も披露され、バラエティーに富んだ内容で会場を盛り上げた。
マブリは久々の朝崎郁恵との共演だが、いずれも息がぴったり合い、演奏のうまさが光っていた。ライブで唄われるのはめずらしい「ちょうきく女」も披露され、ラストはお馴染みの「六調」で会場には更に一体感が生まれる。退場した後も拍手は鳴り止まず、再登場すると「おぼくり」で締めくくった。
会場を出ると、この日は台風が通過して天気が悪かったのだが、朝崎郁恵が「帰り道に満月が見られるかもしれませんね。」と語ったとおり、夜空を覆う雲もなくなり、きれいな満月を拝むことができた。朝崎郁恵の唄に自然が共鳴して、自分達のために雲を開けてくれたのだろうか。実際、朝崎郁恵の唄には不思議な力が宿っていると思う。